海外生活の孤独と対処法

海外生活に、孤独感はつきものです。でも、時々それが大きなプレッシャーとなって、私たちにのしかかってきます。ことに、永住していたり、また長期の滞在が確定している場合などは、どうしていいかわからず、私たちを苦しめることも。孤独感からうつ病になることももちろんあります。

海外移住のライフサイクルの中では、いくつかのタイミングでバランスが崩れ、孤独感にさいなまれやすくなる時期があります。

今回はとくに、移住3,4年目に感じることが多い停滞感・孤独感について、その理由と対処法について書いてみました。

3,4年目がつらい理由

だんだん状況が客観的に判断できるようになる

最初は自分の直近しかみえませんが、すこしづつ見える範囲がひろがっていき、自分の状況などをより広い社会に比べてみることができるようになって来る時期です。

現地の、または他国出身の友人と自分を比較したり、また日本にいる友人の近況などを聞いて心がぐらついたりすることも。

他にはどんな理由やきっかけがあるのか見てみましょう。

ラーニングカーブの停滞

最初の1,2年は、不慣れなために大変なことも多いのですが、当面の目標ややらなければいけないことも比較的明確です。日常会話を修得し、日常生活のルールを覚え、日々をつつがなくこなすようになることが必然的に最初の課題だったでしょう。学生であれば、TOEICやTOEFLの点数を伸ばし、大学やカレッジのプログラムに入学するなど一応の目標が達成できる時期かもしれません。また、駐在員やその家族であれば、自分も仕事にも慣れ、子供も学校にも慣れて一安心、とふと一息つくときです。

非日本人とのコミュニケーションの難しさ

そんなとき、ふと気が付くのが自分の交友関係。

日本での多層的な友人関係、地縁や血縁上の付き合いなどにくらべ、外国での交友関係はどうしてもせまく、また親密度も必然的に薄いものです。

最初は新鮮でおもしろかった、他の文化の友人との交流をむずかしいと感じたりしはじめる場合もあるでしょう。

特に、進学や就職などで、「外国人同士」の環境から「現地住人」のネットワークにかかわり始めると、あらたなカルチャーギャップを目の当たりにすることにもなります。

そういったときに、どういったふるまいをすればいいのか、また相手との距離感の取り方など、あらたな悩みが生まれてくることもあるでしょう。家庭や子供がある場合は現地の学校の保護者との関係や、職場の人間関係、近所づきあい、in-lawsとの関係など、言葉や文化の壁を感じる機会も増えてきます。

マルチカルチャリズムの裏側

カナダはマルチカルチャリズムを掲げ、他民族・多文化の共存とお互いを許容しあうことを一つの指針としています。これはすばらしいことですが、日本で育った日本人には、本質的にはわかりにくいコンセプトです。

現実的には、カナダの社会において、多くの人々が、自分のルーツの文化を継承し、それぞれのエスニックコミュニティの中で交流を深めています。特にニューカマーにはその傾向が強いでしょう。

狭い日本人社会でのストレス

気の置けない付き合いのできるコミュニティを探すと、当然現地の日本人コミュニティに目が向きます。子供のいる人は子供のプレイグループや日本語学校を介してのお付き合いから、友人関係を構築することも多いでしょう。また、現地の日本人・日系人コミュニティの非営利団体などでボランティアをするなどして交友の場を広げていくこともあるかと思います。

居住する地域にもよりますが、日本人コミュニティはどこも非常に狭く、人によっては息苦しさを感じてしまう場合も少なくないようです。また、日本ではつきあわないような、性格があまり会わない人とも、「日本人だから」という理由だけでお付き合いをせざるを得ない状況になってしまうこともあります。

また、大人になってからの付き合いのため、学生時代からの友人のように、本当に気の許せる関係を構築するのは簡単ではありません。お互いに気を配りながら、気持ちのいいお付き合いを長く続けられる友人やグループを探すには、時間も労力もかかります。

対応方法

提案1:セルフトークをみなおそう

気付かないうちに自分の頭の中でくりかえしている自分への言葉。これがセルフトークです。落ち込んでいるときは、とにかくセルフトークもネガティブになりがち。

このネガティブなセルフトークが、さらにネガティブな考えを正当化し、助長します。

「もしあのとき、日本にとどまっていたら、こんな状況にはならなかったのに」

というセルフトークを繰り返していると、すべての物事がそのフィルターをとおしてネガティブにみえてしまいます。

最初は心からでなくとも、意識的にセルフトークをポジティブなものに変えていく努力をしてみましょう。

「今日もいい天気だな」

「英語も随分上達したな」

「あの人は、親切なひとだな」

と自分に言ってみることで、自分のフィルターが徐々にかわってきます。

提案2:行動しよう

「孤独感」に打ち勝つには、どんなストラテジーがあると思いますか?

自分なりに、「孤独感」をすこしでも和らげるために何ができるのか考え、行動プランをたててみましょう。

家に閉じこもりがちな人は、一人でも外出してみましょう。今はもちろんソーシャルディスタンシングが大きな課題ですが、近所にあまり混みすぎていない公園などがあれば、散歩を日課にしてみましょう。また、定期的に日本の友人や家族と連絡をとり、できるだけ人と話をすることを心がけることも有効でしょう。

人それぞれ、思いつくことは違うと思います。自分にあう「行動」のリストとプランを、考えて実行してみてください。なんでもいいのですが、一つだけ大切なのは、体の一部分を使って「なにかをする」ことを心がけることです。

提案3: カウンセリングをうけてみる

もしもあなたの孤独感が非常に強く、日々の生活や精神状態に影響をおよぼしているのであれば、専門家に相談してください。カウンセリングによって、うつ状態を緩和したり、解決策をみつけたりする手助けが得られます。カナダに在住の方は、非営利団体のJapanese Social Services に連絡してみることをお勧めします。コロナの状況下でも、電話などによるカウンセリングを行っています。

または、ファミリードクターのいる方は、ファミリードクターに相談してみてください。症状によっては、お薬を処方してもらう必要のある場合もあります。

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