海外生活をはじめてみると、思っていたよりも多くのストレスにさらされていることに気づきます。生まれ育った環境や言語からはなれ、まったく別の「常識」の中で生活するのですから、当然といえば当然です。海外で実際に生活したことのある人にとっては、これはしごく当たりまえに感じられでしょう。しかし、異文化で暮らしたことのない人には想像するのがすこし難しいかもしれません。
私も、カナダで生活している、というと、「のびのびと子育てができそう」「恵まれた自然のなかでストレスフリーでうらやましい」というコメントをいただくことがあります。確かに、そうなんです。そうなんですが、そういった心境に至るまでには、心の中でさまざまな変化を経なくてはなりません。
では、海外生活の中でストレスが大きくなってきたとき、どう対処すればいいのでしょうか?以前の記事では、やめたほうが良いことについて紹介しましたが、この記事ではストレス対処のための心構えについて説明していきます。
そもそも、ストレスってなんなんでしょう?
ストレスとは
まずは、「ストレス」の定義について確認してみましょう。
WHO(世界保健機構)によると、ストレスとは
とされています。
ここで、注目すべきなのは、「ストレスは人間の自然な反応」であるという点です。「自然な」という点はここではおいておき、まずは「反応」であるということを認識してください。
過度に強いストレスを感じているとき、または長期にわたってストレスにさらされているときには、この視点は忘れられてしまいがちですが、ストレスは人間の反応なのです。
たとえば、海外の生活の中で、勤務先でのコミュニケーションにストレスを感じている、顧客や同僚とうまく話せない、などという状況にあるとしましょう。「話せない」ということが表現する欲求を満たしていない、ということが、ストレスの一つの原因にあげられるでしょう。また、そのような自分が他人の目にどう映っているか、どういう人間だと思われているのか、といった思考にとらわれ、それによってさらに大きなストレスが引き起こされているかもしれません。
一方、あなたのある同僚は、英語力でも仕事上の知識においてもあきらかにあなたには及ばないのに、なぜか日々楽しそうに過ごしています。
この違いはどこから来るのでしょうか?性格の違い?繊細さの違い?そうですね。同じ状況にあっても、ストレスを感じやすい人と感じにくい人がいます。生まれ持った気質、育った環境、価値観など、さまざまな要因が、我々が外から感知するの情報を「ネガティブなストレス」として感じるかどうかを決定します。
ストレスとうまくつきあうために
では、どうやったらストレスをうまくつきあうことができるでしょうか?
まず、第一歩は、ストレス、つまり心配や精神的な緊張状態、は、あなた自身の「反応」であるといういうことを、意識的に認識することです。
認識することで、自分の中に余裕がうまれます。他の選択肢について考える余裕、そして選び取る余裕です。
もちろん、反応といっても「自動的な」部分が大きことは確かなので、認識したからすぐにその日からストレスの感じ方をかえることができる、というわけではないでしょう。ただ、その「自動的な」反応も、思考の転換や心身を整えることによって、すこしづつ変えていくことは可能です。
したがって、第二歩目は、「自動的な反応」にしたがわず、自分の反応を選ぶ練習をすることです。
たとえば、先の例でいえば、まずは「人間関係をうまくやっている同僚の存在に気づく」ことができるようになります。「あれ、あの人は自分より英語もつたないのに、どうして毎日リラックスして楽しそうにできるんだろう?」と、好奇心が芽生えます。そして、同じ外的な刺激に、よりポジティブに対応するためのヒントを、その人から学ぼうとするでしょう。その人を観察したり、あるいは実際に相談してみようと思うかもしれません。
外的な状況は、変えることができなかったり、変えるのに時間がかかったりすることも多いものです。長期的には、そこから脱出したり、実際に状況を改善していくことも必要でしょう。ですが、その過程でストレスに押しつぶされていては、改善にむかってすこしづつ努力することも難しくなってしまいます。
ストレスは、状況そのものではなく、自分の反応であり、適切な対応をすることで軽減が可能である、ということを、まずは覚えておきましょう。
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