海外移住は、人生の転換となる大きなイベントです。文化、生活環境や仕事、友人など、多くの変化を伴う海外移住。メリット・デメリットを熟考し、準備を重ねても、ときに後悔の念にさいなまれたりすることも珍しくありません。この記事では、特に国際結婚を機に海外へ移住している場合の、「後悔」と付き合い方について考えてみます。
Contents
どんな時に「後悔」を感じる?どう対処すればいい?
パートナーとのコミュニケーションがうまくいかない
国際結婚の場合、パートナ―との間に言語の壁があることがほとんどです。ことに、パートナーの出身国で生活しているような状況では、パートナーの母語で日常会話を行うことも多いでしょう。普段の会話はそれなりにうまく通じていても、複雑な問題解決や、感情の表現・理解を第二言語で行うのは簡単ではありません。
ことに、つらいことがあって、自分の気持ちを理解してもらいたいときなど、うまく説明できずにストレスがたまりがちです。そんな時は、「どうして国際結婚なんてしてしまったんだろう・・」と後悔の念をおぼえることも珍しくありません。
こんな時、まず考えてみてほしいのは、意思の疎通の問題や価値観の相違などは、日本人同士のカップルの間でも十分起こりうるということです。
そもそも国際結婚の場合、お互いの「違い」に惹かれあって交際が始まることがおおく、そういった意味では、喧嘩などがおきても、お互いの意見に耳を貸したり、相手を理解しようという心構えがある人が多い傾向にあると思います。
日本人同士の結婚もそうですが、国際結婚ではほんとうに「結婚がゴール」ではない、ということを肝に銘じておきましょう。
- AIベースの翻訳アプリやサイトなど、テクノロジーをうまく使って意思の疎通に役立てよう(DeepLなど)
- 散歩、ジム、ヨガ、ガーデニングなど、パートナーと一緒にできるアクティビティを多くとりいれよう
- 気持ちを表す言葉のボキャブラリーを増やそう
宗教や文化の違い
国際結婚は、文化の違いのみならず、宗教の違いによる習慣や考え方の違いが、夫婦間の関係に大きく影響することもあります。このあたりは、日本人的な観点からは見過ごされがちであるかもしれません。
祈祷や礼拝、着衣や食事など、その宗教に基づく日常の習慣などは比較的わかりやすいですが、宗教的な価値観や男女間の役割、家族の関係性などは、実際に一緒に暮らしてみないと実感としてはわからないものもあるかもしれません。
北米では近年、若い層の教会や宗教離れも加速している感はありますが、根底にある考え方はやはり長年親しんだ、または親やその上の代から教えられてきた宗教に影響されているといえるでしょう。
日本にいるときはあまり自身の宗教観など考えなかったという人も多いと思いますが(私もそうです)、改めて、自分の価値観や考え方、世界観などについて、振り返ってみましょう。
- 自分の宗教観・価値観をしろう。
- パートナーや周囲の人の物の見方、宗教観を学び、尊重するよう心がけよう。
- 自分の宗教観・価値観についても説明し、尊重してもらうようにパートナーと相談してみよう。
勘違い・誤解に後から気づく
これも日本人同士の結婚にも大いにありうることですが、結婚したのちに、相手の嫌なところやあまりありがたくない新たな側面を発見してしまうことがあります。
また、国際結婚でありがちなのは、言語や文化の違いから、婚前に相手の言っていることや状況を完全には理解しておらず、自分のいいように解釈してしまっていたことに気づく、というもの。たとえば、相手の職業や学歴が理解していたものと違っていた、なんていうことも。
また、相手のウソや誇張を見抜くのも、直観のようなものが働きにくく、日本人どうしでの場合よりもどうしても困難になってきます。
- 結婚後に、本当に重大な事実を発見してしまった場合には、きちんと話し合うことが大切です。
- もし二人で話し合うのが難しい場合は、カウンセラーなど専門家に間に入ってもらうのが賢明でしょう。
- もしその事実が今後の生活に支障をきたすほど重大な場合(例えば犯罪歴や薬物使用、職業や収入についての意図的なウソ)には、婚姻関係を解消することも視野に入れたほうが良い場合もあります。
- 自分を責めるのはやめましょう。婚前に気づかなかったのは、高い確率で、あなたのせいではありません。
経済的なストレス
海外移住・国際結婚に際して、経済的な不安は、「後悔」の要因として非常に大きなものとなる可能性があります。現在、カナダでも、物価や住居費の高騰は日本よりも深刻。特に、あなたが日本での安定した仕事をやめて移住したような場合、移住先での経済状況の悪化は大きな後悔につながります。また、結婚後専業主婦をと望んでいた場合も、その希望は現実的ではない可能性も大。カナダの、特に都市部では、比較的高額な生活費をまかなうため、夫婦での共働きが一般的です。
- 日本でのお金の常識が、他国でも同じとは限りません。グローバル化がすすんでいるとはいえ、投資や貯蓄のオプションやリスクなど、その国によって状況は大きく異なります。
- 移住先での投資や金融システムについて、少しずつでも勉強をかさねましょう。
- カナダでは、女性もキャリア志向が強い傾向があります。学歴や資格、経験があれば、子育てをしながらでも、十分にやりがいのある仕事、責任のある仕事につくことができます。若いうちから、ぜひ自分のキャリアを意識して行動しましょう。子供を産んでから学校に行き資格を取る人も大勢います。
対人関係の難しさ、孤立
これまで築いてきた友人や同僚、親戚の輪から、一人とおく離れて住むことになる海外移住。移住前は、「パートナーの友人たちや家族と仲良くなれれば」と考えていたのに、最初はそれがうまくいかない、と悩むこともあります。とくに、あなただけが異文化出身だったり、第二言語で話さなければならなかったりする場合には、うまく輪にはいれずに疎外感を覚えることも。そんなときは、皆が気を使ってくれても、コミュニケーションにつかれてしまい、逆にプレッシャーに感じたりするものです。そんなことが重なると、人恋しいのに人に会うのが怖いという悪循環にはまってしまいがちです。親密で安心できる人間関係は、私たちの人生にとって、とても大切な要素です。社交面一般がうまくいかないと、日本にいればよかった、などという後悔にとらわれがちになります。
- 海外移住先での対人関係に疲れたら、すこしお休みするのもいいでしょう。パーティやあつまりなど、あまり気疲れするようなら、常に出席しなくてもいいのです。パートナーに相談してみましょう。
- 日本人の友人をみつけてみましょう。時に日本語で愚痴を言い合えたり、気晴らしに食事などにでかけたりできる友人がいると、気持ちに余裕がでてきます。
子どもがいる場合
子供との言語の壁
たとえパートナーが日本語を話せなくても、自分は子どもとは基本日本語で話している、という日本人ママ・パパが多い一方、さまざまな理由で、子供が日本語を習得するのが難しい状況に陥ることもあります。
パートナーや義家族が、子供がちいさいうちは一言語に絞るべきという考え方の家庭もあるでしょう。子供自身が第二言語を話すのを面倒がったり、恥ずかしがったりすることもあります。
ただ、ここであきらめてしまうと、将来子供とのコミュニケーションに問題が生じ、ひいては国際結婚や海外移住を後悔するようになる危険性も高くなるでしょう。
- 日本のアニメや動画をつかって、お子さんが楽しんで日本語に親しめる機会を持ちましょう。
- お子さんと、できるだけ日本語だけで話すようこころがけましょう。
- 日本の家族と、ビデオ通話などで話す機会を頻繁につくりましょう。
パートナー、義家族との、教育方針の違い
文化・習慣の違いから、思うように子供を育てられない、自分の意見を否定される、と思うことも、国際結婚においての子育てではあり得ることです。
ですが、日本国内でも、程度の差こそあれ、いろいろな人がいろいろな意見をもっているものです。
特に乳児期には、出産後の体調の変化や睡眠不足、ホルモンの変化などから、気持ちも不安定になりがちです。また、出産後の母親へのサポートなどが、日本ほど充実していない国も多くあります。こんなとき、「国際結婚なんてしなければ、もっと楽だったのに」という考えが浮かびがちです。
- 出産前後はできるだけ多くのサポートを得られるよう準備しましょう。もし可能であれば、日本の家族にも応援に来てもらえるようお願いしましょう。
- パートナーや義家族と教育方針などで意見が合わないときは、我慢しすぎずに自分の意見も言ってみましょう。
授かり婚
授かり婚という言葉がより広く使われるようになり、婚前に妊娠、または出産することへの周囲の理解が深まってきました。子供を授かったのがきっかけで結婚に踏み切ることができた、というポジティブな面がある一方で、準備や熟考の期間をが限られることに付随するリスクもあるでしょう。ことに、国際結婚の場合、結婚や海外での生活ががうまくいかなかった場合、とくに授かり婚では、生まれたこどもを責めるような思考に陥ってしまう危険性も高くなります。
- 海外での授かり婚は、慎重に。
離婚しても子供を連れて日本に帰国できない
日本は、ハーグ条約加盟国ですので、例えばもう一人の親が反対する場合には、海外移住先から子供を連れて日本に帰国することはできません。最悪の場合、子供が成人するまでのあいだ、子供を連れて一時帰国することもままならない状況に陥ることもあります。
こういった状況が起こってしまう背景には、さまざまな要因が複雑に絡み合っていることが多いと思いますので、一概に「こうすればよかった」という提案ができるわけではありません。もちろん、パートナー等からの暴力や精神的・経済的な虐待があったりするのであればすぐに警察、大使・領事館、友人や、その他の機関に相談しなければなりません。ですが、そういった問題がなく、たんにカップル間の仲がうまくいかなくなった、愛情が薄れてしまった、というような場合、結婚および移住についての「後悔」の念に深くとらわれてしまう場合があります。海外居住しているため、婚姻解消の手続きを困難に感じたり、それによるストレスから、なかなか前に進むことができないような状況に陥ると、今度は「後悔」がうつなどの精神疾患に発展してしまう危険性も高くなります。
- パートナーの合意があれば、子どもを連れて日本に帰国できます。子供の将来を考え、居住国についてしっかり話しあいましょう。
- 子どもを連れて日本に帰国することがかなわない場合は、できれば、日本の友人や家族に、あなたの居住国に時々会いに来てもらいましょう。
- あなたが一生日本に帰国できないわけではありません。子供が成人すれば、一緒に日本に行くことも可能です。
- パートナーからの暴力など深刻な被害があるような場合は、現地の警察や、最寄りの日本大使館・領事館に相談しましょう。
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