海外に移住する日本人は年々増加しています。2019年は海外永住日本人の前年度比増加率が過去最高の6.11%、コロナに見舞われた2020年も1%の増加していると外務省が報告しています。男女の内訳をみると、2020年末における海外永住者のうち、男性は197,000人、女性はそれを大幅に超える321,883人となっています。このうち、何割が国際結婚での移住なのかという統計は見つからなかったのですが、その比率はかなり高いものと予想されます。周りを見回しても、友人・知り合いの日本人のほとんどは、国際結婚組です。
国際結婚の手続きそのものは難しくない
国際結婚で海外渡航を実現するのは、瞬発力や決断、そのためのエネルギーは要ります。ですが、それさえあれば、準備や努力なしでもある意味「できてしまう」ものだと思います(もちろん出会いは必要ですが・・・)。そしてそこが国際結婚の怖さです。
例えば、極端な話、短期滞在中に誰かと出会い、そこで「結婚」してしまうことも可能なわけです。もちろん身分証明書としてのパスポートや、出生証明・婚姻要件具備証明書(日本から戸籍謄本を取り寄せる必要あり)などは必要ですが、現地の永住権は結婚するための必要条件ではありません。
結婚するには教会などの宗教機関、あるいはCivil marriageといって市役所などで結婚の誓約をwitness (証人として目撃する)してもらい、証書を発行してもらいます。それをもとに、政府に結婚を登録し、正式な婚姻の証明としてmarriage certificate を発行してもらいます。日本人の場合は、これをもとに日本の役所(または在外大使館・領事館)にも婚姻を届け出ることになります。
結婚と永住権は別もの
国際結婚が簡単にできることの怖さ、と書きましたが、それは外国人との「結婚」そのものがその国での「居住権」に結びつくわけではないからです。
パートナーの国カナダに住みたいと思った場合、今度はこの結婚をもとにあなたの永住権を申請しなければなりません。永住権の申請には、いろいろなカテゴリーがありますが、結婚の場合は、カナダの市民権または永住権保持者であるパートナーが、経済的にあなたを一定期間サポートすることを誓約する「スポンサーシップ」に基づいたファミリークラスの永住権に申請することになります(IRCC ウェブサイト参照)。現在、配偶者・パートナーのスポンサーシップの期間は、通常実際に永住者として「移住」してから3年間です。永住権 の審査においては、スポンサー、つまりあなたのパートナーは、この期間中、あなたを経済的にサポートできるだけの収入があることを証明する必要があります。また、破産申告中である場合、前配偶者へのサポートの支払いが滞っている場合、前配偶者へのスポンサーシップ期間が満了していない場合、生活保護を受けている場合などは、スポンサーになることができないことがあります。パートナーが、ワークビザや学生ビザでカナダに滞在している場合ももちろん、永住権のスポンサーにはなれません。
また、すでにカナダにいながら永住権がおりるのを待つ場合、その期間は政府の医療保険も受けられず、働くことができない期間も長くなります。その間をどう過ごすのか、あらかじめ考えておきましょう。
社会の仕組みを知ろう
このように、国際結婚での海外移住の場合も、ちょっと面倒なプロセスがあり、それはもちろん国によって違います。今はウェブサイトに情報が網羅されているので、言葉がわかれば自分で調べることはそんなに大変ではありません。
私のまわりでは、パートナーがカナダ人で、すべて手続きは彼(彼女)がやってくれたという話を聞くことも多いです。ただ、これは結婚後「うまくいって」、長期にわたって滞在している日本人たちから聞く話です。
残念ながら、カナダ人全員が全員、最初からこのイミグレーションの仕組みを知っているわけではありません。結婚はしたものの、パートナーが永住権の手続きをしてくれず、永住権も取れないうちに現在の短期滞在ビザが切れてしまい、またそうこうしているうちに妊娠し・・・などという状況に陥ってしまうことも、可能性としてはゼロではありません。
自分でも、永住権の手続き、必要書類、プロセスにかかる時間や料金など、できるだけ調べておくようにしましょう。移住コンサルタント等に依頼する方もいますが、自分でも各種申請ができ、必要なフォローアップができるような知識と覚悟を持っておくに越したことはありません。また、パートナーがこういったことを積極的に調べたり専門家に相談してくれているかどうか、ということも、結婚に真剣に向き合っているのかどうかを見極めるうえで、さいしょのチェックポイントといえるかもしれません。
国際結婚:収入を得て自立をめざそう
例えば、国際結婚して初めてカナダに渡るというような場合は、現地で即仕事を持つというのは難しいかもしれません。ですが、リモートワークやフリーランスの機会が増えた今、日本とのやり取りでお金を稼ぐ方法もあります。少額でも自分で収入を得る方法を探してみましょう。
また、すぐに収入に結びつかなくても、現地の言語をはじめとし、興味のある分野の勉強をしたり、情報収集や、人とのネットワーキングを心がけていろいろ行動してみましょう。新しい国で、パートナーに頼らずとも生きていける自信と心の余裕を持つことで、自分のメンタルヘルスやパートナーとの関係もより良好に保つことができます。
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