部活にいくという息子を地下鉄の駅まで送った後、土曜の日中の郊外をのんびり運転していると、こんなラジオのニュースが耳にはいってきました。
植民地主義の大きな犠牲となった、カナダのFirst Nations、先住民族。その苦しみは、残念ながら今も続いています。感謝祭の起源が美しく語られる一方で、北米の先住民族はヨーロッパからの入植者からキリスト教を信奉しない野蛮な民族とみなされ、尊厳を奪われ、迫害を受けたことは、現在ではようやく事実として認知されつつあります。
ハドソンベイ社のポイントブランケットといえば、一目でそれとわかるストライプ柄が特徴の毛布ですが、その歴史は古く、この地がカナダと呼ばれるようになる何世代も前に遡ります。長年にわたり、ノスタルジックなカナダを象徴するスタイリッシュなアイテムとして販売されてきましたが、それは同時に、同社が植民地化に果たした役割と、その結果として先住民のコミュニティが受けた苦しみを象徴するものでもあります。現在、ハドソンベイ社はこのポイントブランケットの販売で得た利益を、先住民主導の取り組みに寄付することを決定したと発表しました。
First Nationsのための新しい祝日、2回目のTruth and Reconciliation Dayにあたる9月30日、ハドソンベイ財団はGord Downie & Chanie Wenjack と提携し、オジブウェ語で「新しい毛布」を意味する「Oshki Wupoowane」という基金を立ち上げると発表しました。この基金は、1枚325ドルから550ドルの価格で毎年販売されているベイブランケットからの利益を、ダウニー・ウェンジャック基金が管理する、先住民の文化、芸術、教育活動に焦点を当てたイニシアチブへの助成金として活用するというものです。
ポイントブランケットとは?
ポイントブランケットの起源は、1670年代にさかのぼります。イギリス王室によって設立されたハドソンベイ社などが行ったFirst Nationsとの毛皮の貿易において、このブランケットはヨーロッパ側からの重要な輸出物でした。ポイントブランケットはFirst Nations の人々の間で珍重され、彼らの生活にさまざまな形で使われるようになり、またさまざまな部族の好みを反映したいくつものデザインが作られました。「ポイント」というのは、ブランケットの端に縫われた線のことで、これが何本あるかによってブランケットのサイズを表しています。のちに、ポイントブランケットは交易の際の通貨のような役割を果たしたともいわれています。
しかし、ヨーロッパとの交易が始まると、ブランケットや物品のみでなく、新しい伝染病などもFirst Nationsのコミュニティに入ってくることになります。その中で、もっとも大きな打撃を与えたのが’天然痘。天然痘は1616年にフランスの毛皮商人によって北米に持ち込まれたといわれています。その後、20世紀に至るまで、天然痘は北米大陸でも多くの死者を出すことになりました。先住民族の部族の中には、天然痘のために人数が激減、あるいは絶えてしまった部族もあったといいます。
具体的な証拠はないといわれてはいるようですが、このブランケットに天然痘のウィルスを塗って先住民族の人々の間に故意にこの疫病をはやらせた、という話も、定説となっているようです。天然痘を塗った毛布を生物兵器として使用するというアイデアは、18世紀に北米の英国軍総司令官ジェフリー・アマーストによって推進されたという話も残っています。
ポイントブランケットは、一方で、儀式などに使われたりと、First Nations の歴史にとって重要なものになっているという側面も。コロニアリズムの象徴として憎まれるべきであるのか、それとも先住民族のアーティファクトとして尊重されるべきであるのか。簡単に答えが出るような問題ではなさそうです。
ハドソンベイで扱っているすべてのブランケットが基金への寄付の対象というわけではないので、購入する際には、注意して表示を確認してください。
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