海外ボランティア事情:カナダ人はボランティア好き?   

カナダ

パンデミック以前には、ボランティア活動を含んだ日本からのパッケージツアーなども組まれていたカナダ。

また日本で2019年に行われたラグビーワールドカップでも、カナダ代表のメンバーが、台風の被害を受けた釜石で汚泥清掃のボランティアをしたエピソードが世界的に話題になりました

カナダ人って、みんなボランティアってやっているのかな?それとも、移民の人たちが、仕事に繋げる経験のためにやっているだけ?

カナダ人全体の、ボランティア従事率は、とっても高いんだよ。最近の統計をみてみましょう!

ボランティア人口はどのくらい?

2020年6月に、カナダ統計局が発行したレポート(Volunteering in Canada: Challenges and opportunities during the COVID-19 pandem)によると、パンデミック以前の2018年、カナダ全体で約1,270万人が慈善団体、非営利団体、コミュニティ組織のためにボランティア活動を行いました。この人数は、15歳以上のカナダ人口の実に41%にあたります。そして、正式なボランティア活動に費やされた時間は、なんと約17億時間。これは863,000人以上のフルタイムの通年雇用に相当する仕事量です。

また、カナダ人は、組織や団体に頼らず、自分の周りの人々を支援するために直接行動しています。このような非公式なボランティア活動は、常にカナダ社会の一部となっていますが、パンデミックの影響下で、この傾向はさらに顕著になりました。最近の報道では、パンデミックの際に、地域での食料品やその他の物資の送迎、食事の調理、医療用ではないマスクの縫製、SNSを通じた情報共有や精神的なサポートなど、人々が直接行動を起こしている例が数多く取り上げられました。

また、非公式なボランティアについていえば、2018年には、約2,270万人がこれに従事したとされています。これは15歳以上のカナダ人口の74%を占めています。非公式なボランティアに費やされた時間は、約34億時間、通年のフルタイムの仕事に換算すると約180万人分に相当する仕事量となります。

非公式なボランティアに関しては、特に、1996年以降生まれの若い世代、i Genの若者たちの参加比率が非常に高かったそうです。

どんなボランティアをしているの? 

では、具体的にはみなどのようなボランティアをしているのでしょうか?

先に引用したカナダ統計局のレポートによると、公式なボランティアにおいては、奉仕時間の多い順に、1.病院、2.宗教関連、3.スポーツ・レクリエーション、4.芸術・文化、5.法律・アドボカシー・政治、6.環境、となっています。

どうしてボランティアが根付くのか?

では、どうしてこんなに大勢の人間がボランティア活動に従事しているのでしょうか?

経験や観察をふまえ、私なりに理由をいくつか考えてみました。

「偽善者」などと非難されない、ボランティアの精神は周囲からほぼ必ず評価される

ボランティアをしているというと、周囲から、いいね、素晴らしいと言ってもらえることはあっても、ネガティブなことを言われることはまずありません。奉仕だからこそ、有償の労働よりもさらに価値がある、というのが一般的な見方だとおもいます。

仕事に就くための経験としてもカウントされる―履歴書に書ける

息子が高校生のときに、学校の授業で初めて履歴書(レジュメ)をつくりましたが、職歴のない彼はボランティアの経験を履歴書に記載していました。

同様に、私の履歴書にも、今でもボランティアの経験がいくつか記入してあります。ボランティアの経験は、内容や責任の重さなどにもよりますが、就職の際にも経験としてカウントされることがしばしばあります。

また、ボランティア先の上司やコーディネーターに、就職の際のリファレンス(身元照会人)になってもらったことも。

こういった意味で、お金による報酬はなくとも、ボランティアをすることが、実際に自分の「利益」になる、という仕組みが社会に存在しているといえるでしょう。

慈善団体やNPOの理事は、ボランティアの名誉職

国に登録している慈善団体や、国または州政府に登録していているNPOなどの理事会は、基本的には無償の理事がgovernance を担当し、executive directorの任命や予算・決算の承認など、その団体のためにもっともHigh level の意思決定を行います。

したがって、通常、慈善団体では、プレジデントやチェアを含む理事はいわば全員ボランティア。いわば名誉職です。

自分の今までの経験やスキルを活かせる、こういった役割を通して社会貢献をするというのも、社会的に認められるための条件、という見方が浸透しています。いわば、ボランティアとしての社会貢献の実績が、キャリア構築の一部として確立されているわけです。

国や州、市町村などで、ボランティアを正式に表彰する制度がある

カナダには、ボランティアとしての活動のみを対象として贈られる表彰制度が、様々なレベルの政府によって定められています。また、非政府機関による、ボランティア・アワードなども多数あります。

高校卒業のためにはボランティア経験が義務付け

オンタリオ州では、高校卒業資格取得のためには、非営利団体で40時間以上のボランティアをすることが義務付けられています。子供たちは、小さい子供向けのサマーキャンプ(夏休み用の学童のようなもの)やコミュニティーセンタ―、病院、老人ホーム、フードバンクやスポーツプログラムなどで、それぞれにボランティア活動をします。

このように、子供のころから、ボランティアを通じて社会に貢献することが良いことであるというメッセージを受け取っているので、大人になってもボランティアをすることに抵抗がなく、さらには積極的にボランティアをしようという考え方が定着しやすいのかもしれませんね。

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